Law Office of FLORENCE ROSTAMI-GOURAN BLOG
米国での解雇(1)
2010年7月17日 23:40

Q 解雇に関してよく、「レイオフ」と「ファイア」という言葉を聞きますが、これらはどう違いますか。

A 「レイオフ(layoff)」は従業員の仕事内容や勤務態度などが理由ではなく、会社側の理由による解雇のことを指します。たとえば、業績が悪化して規模を縮小したり、会社の方針が変わって、それまで所属していた部署やポジション、担当していた仕事そのものがなくなったり、合併によって同じ仕事をする従業員が増えてしまったので人員削減が必要になった、というような場合に使われます。

 一般的に「ファイア(fire)」と言われている解雇は、正しくはターミネイト(terminate)と言います。従業員に背任行為があったり、パフォーマンスに問題があったりした場合などに、特定の従業員を解雇する場合はターミネイトに当たります。


Q アメリカでは一般的に雇用契約書を取り交わさないと聞きました。

A その通りです。アメリカでは書面による契約を取り交わさない、「At-will Employment」(任意の雇用)が一般的です。この場合、会社は理由がなくても従業員を解雇することができ、また解雇の理由を説明する義務もありません。一方、従業員も自由に会社を辞めることができます。

契約書を取り交わすのは、一般的には大企業のCEO、CFOなどのトップのポジションです。雇用者側が、ある水準の経験がある人材を得たいと考えた場合に、契約書を取り交わすことが多いです。

雇用法は常に変化していますので、雇用主は常にこの変化に注意していなければなりません。たとえば昨年からニューヨーク州の雇用法(employment law)が変更となり、雇用者は新しい被雇用者に対して給与額と給与の支払頻度日(2週間に1回、毎月1回など)については、書面で通知することが義務づけられるようになりました。


Q 不当解雇とは何ですか。また、どういう場合が不当解雇に当たりますか。

A 差別による解雇は連邦法の「タイトルVIITitle VII)」で禁じられています。従業員の性別、年齢、人種、宗教、障害者である、妊娠しているなどの理由で解雇すると差別と見なされ、「At-will Employment」であっても不当解雇になります。

ただし、差別があったことを証明するのが難しいため、10年前に比べて、差別による不当解雇で訴訟を起こして勝つケースは減っています。


Q 家族がいるので、解雇されると、まず心配なのが健康保険のことです。 

A 解雇された後の健康保険の扱いに関しては、COBRA(The Consolidated Omnibus Budget Reconciliation Act of 1985)という法律があります。これは、グループ健康保険プランを持つほとんどどの雇用者に対して、雇用の終了により従業員の健康保険が終了する場合、その従業員が既存の健康保険を継続して受けられる機会を与えるべきことを規定した法律です。以前、この期間は18カ月でしたが、現在は36カ月に延長されています。


<おことわり>

記事は一般的な内容であり、記事作成日以降の法律の改正は反映しておりません。個別の案件は弁護士にご相談ください。
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投稿者:
Hiro Sugano
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